著名人

2010年4月30日 (金)

12

ロシア映画 (ミハルコフ監督) の話です。

チェチェン人の少年がロシア人養父を刺殺した容疑で裁判にかけられています。評決は陪審員が下します(*1)。12人の意見が一致しなければなりません。全員一致で非有罪か有罪か。有罪ならば終身刑です。ほとんどの陪審員たちはとにかく早く帰りたい、仕事もあるしね … という感じで、もう初めから有罪モード満点です。ところが、ひとりだけ「非有罪」のほうに手を挙げます。おいおい おまえは何を考えてるんだ、被告はチェチェンのガキだぞ、殺したに決まってるじゃないか などという言葉や視線を浴びます。まるで、シドニー・ルメット監督の「12人の怒れる男」みたいです。それもそのはず、このロシア映画「12」はルメット作品のリメイクなんだそうです。

ミハルコフ作品でも陪審員たちが実に多様であり、自分の人生を語ります。ハーバード卒の金持ち、ユダヤ系市民、グルジア系市民あり。経済的にも政治的にもいろいろです。ただ、ルメット作品はほぼ全編 陪審員たちが部屋で議論する様子なのにたいして、ミハルコフ作品ではこういったシーン以外に被告少年の幼少時代、戦闘も含めたチェチェンの姿なども描いています。評決の前後から重要なシーンが続く点もミハルコフ作品の特徴です。これは俳優としてのミハルコフ自身が演じる実質的な議長が鍵を握っています。

拙者が一番気に入ったのは、グルジア系市民が、カフカスではナイフの使い方はこうなんだと具体的に(ちょっと内緒です)示すところです。このシーンは、もしかすると見ている方が退屈するかもしれない議論ばかりの様子に娯楽的なアクセントを入れていますし、陪審員が自分の人生と被告の人生を語る延長として大きな意味があると思います。

資料によって異なりますが、ミハルコフの「12」は160分ほどです。長いです。冗長な部分が多いと感じる人たちもいるのではないかと想像します。しかし、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、凝縮されたロシア世界を見るのだとしたら、悪くありません。ロシアにぐっとくるところがある方々にはお勧めしたい映画です。

(*1) присяжный (заседатель)

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2010年2月18日 (木)

婿殿

前に「反対語同居」という記事を書きました。同じ単語が反対の意味や意外な2つの意味を表すことがあるという現象です。いわば、「単語の多重キャラ」ですね。人間にはあるでしょうか、同じようなことが。あるときは善人で、あるときは悪人。あるときは真面目で、あるときはおふざけ。う~ん、なんか普通にありそうですね。

フィクションに出てくる こういった多重キャラには印象深い人がいます。熱帯魚店の店主である若い女性は、実は北の工作員でした(映画)。会社で何をやっているのかよくわからないニーチャンは、実はトラブルを解決する格好いい特命係長です(テレビドラマ)。極悪人は温厚な紳士と同一人物でした(小説)。

そして、やはりこの人物を忘れるわけにはいきません。ぱっとしない警官みたいな仕事をしていて、家に帰れば「婿殿」とコミカルに虐げられる彼は、闇の世界では覚悟を決めて悪を始末する仕事人だったのです。

藤田まことさん、格好良かったです。
ご冥福をお祈りします。

今日のロシア語はお休みします。

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2008年10月26日 (日)

マガマーエフ

Муслим  Магомаев、日本語ではマゴマエフかもしれません。以前、モスクワ放送の日本語番組でもそんなふうに発音していましたし、彼の名を冠した小惑星は「マゴマエフ」と言うようです。

マガマーエフはアゼルバイジャン人の歌手です。ソ連時代はテレビでもラジオでも彼の歌が流れていたので、知らない人はいないと思います。オペラも歌謡曲もレパートリーでした。

一度だけ、コンサートできいたことがあります。お客さんは、大多数が中年の女性でした。もてもてです。たしかに、かっこよかったですね。プログラムは、第一部と、休憩を挟んで第二部がありました。第二部のあとで、つまりコンサートが終了するはずのところで、アンコールを求める拍手が鳴り止まないので、「え~、では第三部をやります」みたいに歌い始めたのを覚えています。なかなか、サービス精神が旺盛な歌い手さんでした。ソ連時代に拙者がモスクワで経験した楽しいコンサートの一つです。こんな楽しいおっちゃんがソ連人民芸術家だと知ったのは、かなりあとのことです (*1)。

最近は歌っていなかったようですが、でも忘れることはありません。10月25日に永眠されました。合掌。

http://www.kp.ru/video/section/28/
これは新聞のサイトです。マガマーエフのビデオを見ることができます。

(*1) Народный артист СССР

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